壊れてしまった弁護士たち

若手弁護士に実際に起きた出来事を、個人を特定できないように相応のフィクションを交えながら紹介していきます。

新年あけましておめでとうございます。
さて、昨年開設しました本ブログですが、開設時に用意していたひととおりのネタを掲載しましたので、当面更新を休止させて頂くことにします。
永らくのご愛読、ありがとうございました。
また題材が溜まりましたら更新を再開するかもしれませんので、そのときはよろしくお願い致します。
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 また、他の事件において、証拠調べ段階にまで及んでいるにもかかわらず、ボスの指示に基づきやむなく書いていた準備書面がどうしても府に落ちないので、O弁護士はボスが争点を理解していないのではないかと疑問に思い、ボスに「争点は○○ですよね。」と確認をした。参考判例も示して、説明をした。するとボスは、「そんな法理論はない!O弁護士の独自の説だ!」とまたもや激情しO弁護士を非難し始めた。ボスが主張を変えないまま、証拠調べが終わった。裁判所からの和解勧告に対し、相手方は、ボスがトンチンカンな主張立証をしたので、応ずる気配がなかった。ボスも自説にこだわったために、裁判所の提案に乗る気配がなかった。それでも、裁判所が、半ば強引に和解勧告をしたために、双方、和解の席に着くこととなった。和解の席上、裁判官がボスに対し、「問題となっているのはこの点ではないですか。」と教示したが、執拗に自説を述べて、結局、和解には至らなかった。判決が出て、O弁護士が、従前指摘した判例に沿った内容であった。そのことに対しても、ボスは、「おかしい。おかしい。」を連発し、依頼者を無理矢理説得して控訴させようとした。その際に、O弁護士が、判例のことを説明しようとすると、ボスは「おまえは黙っていろ、何も分からないくせに。」と依頼者の前で罵倒した。O弁護士は、静かに退席し、二度と事務所には戻らなかった。(完)
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 新人弁護士O弁護士は、ある事務所に入所した。O弁護士のボスは、かねてより訴訟以外の業務を行うことが多く、要件事実や間接事実についての知識及び感覚に欠けているところがあった。O弁護士がある事件の訴状を起案するにあたり、必要な事実関係を依頼者に尋ねる必要があったので、打ち合わせにおいて、依頼者に事情を尋ねたところ、「ボスはそんなこと聞く必要はない!」とO弁護士の質問を遮断した。訴状に請求原因として損害と間の因果関係を記述するために必要な事実関係だったので、打ち合わせの後にO弁護士はボスにその旨説明をしたところ、ボスは「因果関係なんか、いらないんだよ!」と激怒した。O弁護士は、研修所で十分な勉強をしてきた自負があったので、請求原因の欠けた訴状を書くことに大変抵抗があったが、仕方なく、ボスの指示に従った。第一回口頭弁論期日において、裁判官から因果関係の主張が欠けているので、次回までに追加するよう注意され、その旨をボスに報告すると、「それは裁判官が間違っているから、次回期日で、裁判官間違っていますよ、と主張してきなさい。」と怒られた。O弁護士はやむを得ず、ボスの主張を次回期日で述べたところ、今度は、裁判官に、怒鳴られて、「次回期日までに主張しないのであれば、主張自体失当で終結します。」と言われてしまった。O弁護士は、その旨、ボスに報告すると、「よし、私が行って、裁判所を説得しよう。」と言って、次回期日に、裁判官と、口角泡を飛ばす大激論をする始末であった。結局、「そこまで言うなら、書いてやる。」と裁判官に捨て台詞を吐いて、因果関係の主張をすることとなった。O弁護士は、このようなボスの下で働くことに不安を感じ出した。(続)
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 成り立ての弁護士が千丈の堤ほど大きいとは思えないが、蟻の一穴で、すべてが壊れることもある。油断大敵である。少し、仕事に慣れたときに限って、大きな失敗をしがちである。なお、失敗は成功の元であるが、失敗を気にするあまり、羮に懲りて膾を吹く、ということになってはいけない。
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 頼まれた仕事がいつまでも上がってこないと、当然、催促を受ける。普通であれば、一日でできるものが、二日も三日もかかっていては、当然、言われる。催促を受けるということは仕事が遅いと同義であり、あなたの能力の評価は落ちつつあるということである。最初は分からないことが多いので時間がかかる、というのは、自己弁護に過ぎない。どうせ、完成したものはできないのであるから、最初のうちは、拙速を心がけるべきである。遅くて拙劣は最低である。
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 そこで、P弁護士はボスから指示があった際、メールでボスに確認をして、証拠を残すこととした。また、ボスに担当案件の報告をする際も、口頭の報告では、後日、「そんなこと聞いていない!」と怒鳴られることが再三あり、簡易な報告もすべてメールで行うこととした。ところが、ある日、既に報告したことを前提に、ボスに事件処理の方向性の確認をしたところ、ボスは、「報告自体聞いてない、勝手にそんなことをするな!」と激高して怒鳴り始めた。P弁護士は、「メールで報告しています。何月何日のメールです。」と回答すると、ボスはメールを確認し始めた。P弁護士は、ボスのパソコンを覗き込み、ボスが当該メールを開封していることも分かった。すると、ボスは自分の非を認めたくないばかりに、「こんな報告では意味が通じない。」などと、一層不合理な憤激を始めた。P弁護士は、頑迷固陋な性格のボスのもとで業務をすることに疲れ果ててしまった。
 また、他の訴訟案件の打ち合わせにおいて、ボスが依頼者から既に聴取していた重要な事実関係を理解していないため、的外れなことを述べ始めた。P弁護士は、依頼者の前でボスに恥をかかせることはしたくないけれども、依頼者一同が困惑し不信な表情を浮かべ始めたので、事務所の信頼を守るために訂正をした。すると、ボスは依頼者の前で恥をかかされたと感じ、その打ち合わせ中、依頼者に自分の権威を見せんとすべく、P弁護士を些細なことで怒鳴り続けた。P弁護士は、その日から、貝になった。(完)
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 新人弁護士P弁護士は、某事務所に内定を得、一人前の弁護士になるべく志を高く持ち、溌剌として入所初日を迎えた。
 事務所に行くと、早速、ボスから指示がきた。指示は「このような内容の契約を締結したいから、契約書を作成する際のポイントを書いておいて。」というものだった。P弁護士は、「契約書を一から作成するのではなく、まず、ポイントとなる部分を挙げれば良いのですか。」と確認した。そうするとボスは「そうだ。ポイントとなる項目を挙げて。」と返答した。そこで、P弁護士は、張り切って図書館などで調査をし、翌日、ボスに書面を提出した。ところが、ボスは、書面を見るやいなや「契約書を作れと言っただろう。」と前日とは明らかに異なることを声を荒げて述べ、P弁護士を叱責し始めた。P弁護士はボスの言辞に大変驚き、困惑しながらも、ボスの指示に従い、急いで、契約書の作成に着手した。
 日数が経過し、ボスと同僚とのやりとりを伺っていると、ボスの指示は朝令暮改が頻繁であること及びボスは自分が出した当初の指示を覚えていないことが分かった。(続)
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 すべての依頼者が、いい人とは限らない。相性が合わない、とか、性格が気に入らないなど、主観的に嫌な依頼者はいる。また、頼まれた仕事が進んでいないと、何となく会いたくない依頼者もいる。嫌だと思うと、お互い疎遠になり、意思疎通が欠け、ひいては、トラブルになりやすい。もし、嫌だと思ったら、逆に、積極的に打ち合わせを入れたり、報告書を提出したりなど、積極的に会う機会を設けるべきである。いつまで経っても、嫌だという感じは変わらないかもしれないが、仕事上のトラブルは避けられる。しかも、駄目なものは駄目だと意見ができるようになる。嫌な依頼者から逃げてはいけない。
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