壊れてしまった弁護士たち

若手弁護士に実際に起きた出来事を、個人を特定できないように相応のフィクションを交えながら紹介していきます。

 KYとか、TPOとか、は常に心がけるべきである。色々と経験したことのない場面で、余計なことを言ってしまったり、出してはいけない手紙を出したり、裁判官に文句を言ってみたり、等々、もっとその場の空気を読め、と言われることがある。新人は、経験不足であるから、空気が読めない方が普通である。といって、物事を台無しにしてしまうことは避けたい。この場合、もっとも、無難なことは、格言のとおりである。「雄弁は銀、沈黙は金」、分からないときは、相手方に、どんなにせっつかれても沈黙を守ろう。
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 Q弁護士は、事務員と弁護士との違いを見いだそうと、日々、色々と考えてみたが、知識と言うことに関しては、知っているかいないかで、違いがないように思えてきた。他の部分は、というと、経験に関しても、事務員が上のような気がして、困ってしまった。
 Q弁護士は、まずは、手続面に精通しようと考え、書記官用の教材や裁判所規則などを、ひたすら勉強した。結果的に、事務長の朱文字は減ってきたが、このことばかりしていたので、他の部分が疎かになった。ある日、ボスから、「君の準備書面は、ずいぶん形式的だね。訴えるものが感じられないよ。」と言われてしまった。「法律家らしい文書にしてくれないかなあ。」とも言われてしまった。また、ある日、計算書を作成していると、「そんなことは事務員にやらせて、先に、こっちの内容証明の起案をしてよ。」とボスから催促されてしまった。事務員には、仕事を頼みにくいし、ボスからはせっつかれて、Q弁護士は、窮地に陥ってしまった。それを、事務員が横目で見て、笑っていた。 (完)
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 Q弁護士は、ある時、打ち合わせのために急いでコピーを頼んだところ、何もしていないにもかかわらず、忙しいふりをして、「先生、それくらい自分でやって下さい。」と戻されてしった。ボスも、仕事をしないことについて、特に叱責することもなく、Q弁護士には、給料を無駄に払っているとしか思えなかった。どうも、この事務員は、経理畑出身で、事務所の経理関係を一手に引き受けていることから、ボスとして、知られては困ることを把握されているようであった。そのこともあって、この事務員に、あまり強くは怒れないらしかった。しかも、数字には本当に強くて、破産事件や民事再生事件では、その事務員の能力がかなり発揮されているようであった。Q弁護士が、見よう見まねで、計算書を作ったところ、紙面が殆ど真っ赤になるほど、訂正されて戻ってきた。ここでも、Q弁護士は、自分の能力なさを痛感しつつ、やりきれない気持ちでいっぱいであった。
 いつの日か、この事務員を見下してやろうと思って、Q弁護士は、業務に励むのだが、現実には、訂正文字が増える一方で、日々、萎縮していく自分が悲しかった。こっそり、姉弁に相談してみたが、姉弁も、実は頭が上がらないとのことで、事務員に頼まず、全部自分で処理しているとのことであった。(続)
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 Q弁護士は、ボス1人、姉弁1人の事務所に入所した。Q弁護士は、事務所に入って、いきなり問題に直面したが、それは事務員が、Q弁護士を馬鹿にすることだった。
 まず、事務長であるが、ボスの大学の数年後輩らしく、昔は司法試験受験生で、バイトで事務員になったらしいのであるが、そのまま事務所に正式な事務員としてずっと残って今年で30年近くという人であった。
 長年の経験から、裁判所関係の手続に関しては書記官なみに精通していて、ボスの信頼も厚かった。簡単な書面は、ボスではなく、その事務長がチェックし、ご丁寧に赤で訂正をして、Q弁護士に戻してきた。裁判書類に関しても、物件目録のチェック、戸籍謄本の確認など、司法修習中には、Q弁護士が殆ど勉強していないことに関し、大きな朱文字で直してきていた。その都度、「こんな書類を出したら、ボスが恥をかきますよ。」とニヤリと笑って、見下していた。しかも、Q弁護士のことをボスと一緒に、「Q君」と呼んでいた。
 Q弁護士としても、このことが嫌で嫌でたまらなかったが、自分の不勉強もあって、文句がつけられなかった。しかも、時々、事務長はボスにQ弁護士についての評価めいたことを告げているようであり、居心地が非常に悪かった。しかも、自分の不出来がボスにも伝わっていいると思うと、やりきれない気持ちであった。
当然、Q弁護士はその事務員に個人的な仕事は全く頼むことがなかった。
 もう1人は、Q弁護士より10歳ほど年上で15年目とのことであった。一言で言えば、とにかく仕事をしたがらないタイプであった。(続)
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 交渉事が行き詰まったり、或いは、訴状を書いていてどうしても法律構成がうまくいかなかったり、デッドロックに陥ることは良くある話である。自分で色々考えること自体は、能力を高める効果もあるが、どうしても、うまくいかないと、事件を放置してしまうことがある。これは問題である。何故うまくいかないかを冷静に判断し、その理由が解明した場合に、次に検討すべきことは、その問題は解決できるのかを判断することになる。たとえば、もし、法的にできない裁判を依頼者にできると言ってしまったのであれば、謝るしかない。下手に、長引かせることはトラブルの元である。交渉事では、その理由が相手方にあるとすれば、それはどうしようもないのである。
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 契約のチェックを依頼されて、契約日の翌日に、チェック結果を出しても、何の意味がないことは、誰でも分かるはずである。これは、期限の管理を徹底するしかない。こんなことをすれば、二度と依頼は来ない。
 準備書面の起案を頼まれて、裁判所の指定する提出期限ギリギリに、ボス弁に出したりすれば、当然、この台詞を食らうはずである。自分だけで完成する仕事であれば、ギリギリでもかまわないが、誰かの添削を受ける仕事であれば、逆算して、いつまで出せば良いかを判断すべきである。分からなければ、受けた仕事をいつまでにやれば良いか、その都度確認すべきである。
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 ボスが、不機嫌そうに「いやぁ、いきなり私に対しても、えらい剣幕で、この事務所では、何であんな弁護士を雇っているんだ、所長として責任を感じないのかとか、一方的に言って切られてしまってね。うちは、個人事件は一応自由ということになっているが、こういうことは極力ないようにして欲しい。」と言うので、R弁護士が謝ると、ボスは続けて「まぁ、私も弁護士だから、いろんな相手方がいることは分かっているので、この件はもういい。ただ、良い機会だから言っておくが、君は債務整理でヤミ金事件もやっているようだが、最近、事務員がヤミ金業者からの電話を怖がっているようだ。これも個人事件だから自由だと言ってしまえばそれまでだが、あまり度が過ぎると、うちのカラーに合わないという話にもなって来るから、その点、よく考えるように。」と言われてしまった。
 元々、ボスからは、個人事件は自由にして良いよ、と言われていたのに、ボスは、あまり、そのことを快く思っていなかったことが分かった。R弁護士は、その場はひたすら謝って退散したが、何となく、釈然としなかった。
 このことがきっかけとなって、ボスとの人間関係がだんだん悪くなっていった。R弁護士は、できるだけ、事務所に迷惑をかけないように、事件処理をしていたが、何故か、悪い方向悪い方向で、物事が動き始めてしまった。ある日、ボスが、R弁護士の事件の電話の取り次ぎをする事態も発生し、ボスから、「私は、君の事務員かな。」とまで、イヤミを言われてしまった。これ以上、悪化してはいけないと思い、R弁護士は事務所を去った。 (完)
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 R弁護士は、イソ弁として、3年目の時に、個人事件として、離婚事件を受任した。
 R弁護士は、奥さん側で、とりあえず調停をして欲しいということで、夫である相手方のD氏に調停を起こした。離婚理由は、D氏がすぐ感情的になるということだけあったが、かなりひどい状態らしかった。
 D氏は、調停の席上、かなり感情的に話をするだけではなく、調停の期日が終わると、D氏は事務所に電話をかけて来て、その調停の話の内容について文句をつけてきた。
 ある時、またD氏から、電話があり対応していると、何か気に障ったのか、いつにも増してD氏は感情的になり、「所長を出せ所長を。」と言い始めた、
 R弁護士は、「これは、私が個人として受任している事件なので、所長は関係ない。」と説明をしたが、相手は、「そんな馬鹿な話があるか。大病院とかで、担当の医者に問題があれば、院長とかが責任を持つのは当然だ。屁理屈を言うな。」と更に怒り始めた。D氏は、自分が医者であることから、その感覚で話をしているようだった。
 R弁護士は、ボスに代わるわけにもいかず、ひたすらそれはできない旨を説明したところ、D氏は「話にならん。」と言って、電話をガチャンと切った。
 その時は、それで終わったと思っていたが、数日後、R弁護士は、ボスに呼ばれた。
 ボスによると、R弁護士が留守の時に、D氏から電話があり、R弁護士がいないと聞くと所長に繋いでくれと言われ、事情をよく知らない事務員さんがボスに繫いでしまったということであった。(続)
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