壊れてしまった弁護士たち

若手弁護士に実際に起きた出来事を、個人を特定できないように相応のフィクションを交えながら紹介していきます。

 同期の勤務弁護士が集まると、ボス弁の悪口や兄弁の悪口が話題となるが、結論として、自分たちは悪くない、彼らが悪いというところに帰着する。これによって、ストレスを発散させ、翌日からの仕事の英気を養うということであれば、少しは意味がある。しかし、自分たちの結論が正しく、本当にボス弁や兄弁が悪いと考えていたら、それは問題である。8割から9割までは、勤務弁護士の方が悪いのが実情で、本当にボス弁や兄弁が悪いのは少ない。自らの不手際を人の所為にして、自らを正当化する行為は慎むべきである。自分が正しいと思って行動することにより、さらに、人間関係も悪化し、良い結果にはならないのである。傷を舐め合うのはほどほどにした方が良い。
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 「ジョーカーゲーム(柳広司著)角川書店」という本があり、弁護士ではなくスパイの話であるが、その基本理念は、何事にもこだわるな、ということにある。弁護士も、何かにこだわると、物が見えなくなったり、やる気がそがれたりすることがある。自分の信条に反する事件などは受けないという選択肢もあるが、成り立ての弁護士では諸般の事情からそれもままならないであろう。そのとき、嫌だ嫌だと思って、仕事をすると、かなりの確率で失敗したり、或いは、依頼者とトラブルとなったりするのである。ここは、自分の価値観を捨ててでも、真剣に事件に取り組むべきである。事件によっては、自分の人生をすべて否定することもあり得るのであるが、それを乗り越えなければならない。
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 しかし、弁護士も自営業者である以上、経営がうまくいかなければ食べていけないのは当然の話なので、U弁護士は、現在、将来に向けてさまざまな手を打つべく、営業活動の強化・広告宣伝の展開等を前向きに検討していた。ところが、2ヶ月も一本も電話のない日々が続き、睡眠が極端に浅くなり、心配で眠れない日々が続きだした。事務員が奥さんのため、事務所でも家でも、夫婦喧嘩となりだした。奥さんの不満は、独立は早かったのではないかの一点張りで、U弁護士は、自分の志を理解してくれない奥さんにイライラしていた。ある日、奥さんが、「どうせ仕事がないのだから、私は事務所に出ない。」と言って、事務所に出てこなくなった。U弁護士は、事務所電話を携帯電話に転送するなどして、何とか、仕事をこなそうとしたが、事務作業を含めてすべてをこなすことは非常に負担となった。頼まれる仕事も、相変わらず、採算性が低く、自転車操業の日々が続いた。家に帰っても、奥さんは口を聞いてくれず、疲労困憊の中、志だけで日々を過ごしていた。
  ある日、先輩に連れて行かれたキャバクラで、ある娘に妙に好かれてしまった。その娘は、「弁護士は素敵。弁護士は格好いい。」を連発し、U弁護士に、やたら抱きついてきた。U弁護士も、何となく良い気分になってしまった。家に帰っても、口を聞かない奥さんしかいないため、ついつい、その日、その娘と外泊してしまった。翌日から、U弁護士は、その娘に入れあげてしまい、家にも帰らない日々が続きだした。仕事の状況は全く変わらなかったが、現実を見つめることに疲れてしまったので、楽しいことに現実逃避してしまった。たまたま、家に帰ったら、奥さんはいなかった。そこには、家賃だの水道光熱費だの山のような請求書が置いてあった。(完)
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 弁護士の増員状況下で独立する以上、容易なことではうまくいかないということは、U弁護士も当然覚悟していたが、現実の状況は思った以上にシビアなものであった。
  まず、最初に直面したことは、不況を背景に、全体としての事件数自体が減ってきている上に、採算性のない事件が相当数あり、しかも、ある程度、あてにしていた法律相談も、弁護士増員の状況下でそもそも割り当て自体が少なく、かつ、受任に結びつく相談自体があまりなかった。
  結局、U弁護士の事務所開設一年目の収支は、経費を賄えるだけの売上は何とか上げられたものの、夫婦二人の生活費を賄うまでの収入を得るには至らず、勤務弁護士時代のなけなしの貯蓄を取り崩して生活せざるを得ないという結果となった。
  もとよりU弁護士としては、事務所開設後、最初の2~3年間は、仮に赤字が続いたとしても頑張って事務所を維持しようと考えていたことから、単年度(一年目)の収支が思わしくなかったからといって、直ちに極端に悲観的な考えを抱いたわけではなかった。ただ、このままずっと売上が伸びなかったら、夫婦二人で今後の生活をどうしたらよいだろうか、今のままでは子供を持つこともできないのではないか、という不安はひたひたと胸にせまり、心から離れることがなかった。
  もちろん、このような将来に対する生活の不安等も、独立開業にチャレンジした結果得られた貴重な経験であり、このような悩みも経験するためにこそ独立を決断したわけなので、U弁護士としては現在の状況に不満はなかった。(続)
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  U弁護士は、登録6年目の若手弁護士で、昨夏に丸4年間勤務した事務所から独立して新たに事務所を構え、今秋で2年目を迎えた。事務所は、弁護士が1人(U弁護士)だけのいわゆる一人事務所であり、妻に事務員をしてもらっていた。
  U弁護士が昨夏まで勤務していた事務所は、その専門分野においてはある程度名前を知られた事務所であり、また、ボスが依頼者の心を掴むのが非常にうまかったこともあって、経営的にはそれなりに安定した良い事務所であった。いずれボスの息子が弁護士となって、ボスの後を継ぐというような話などもあり、U弁護士としては、ボスの下で、ずっとその事務所に勤務するということでも良いかなとも考えいた。しかし、その事務所は専門分野を売りにしている事務所なので、扱う事件に偏りがあることは避けられないところ、U弁護士としては、若いうちにある程度幅広く事件を扱って経験を積みたいと考えていたこと、将来にそなえて、事務所の経営等についても一通りのことは知っておきたいと考えたこと、弁護士の増員傾向が今後も続くとすれば、後になればなるほど独立開業の環境は悪化すると思われること、依頼者の心を掴むボスの話術はボス固有のテクニックと思われ、自分がそれを身につけられるとは思えなかったこと、等の事情から、妻とも相談の上、思い切って、独立開業をすることにした。(続)
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  しかし、その結果は惨憺たるものとなってしまった。V弁護士は、「絶対に失敗したくない」という意識から、長時間をかけて事前準備を行い、万全のレジュメを作成したが、セミナー本番での時間配分を完全にミスをしてしまい、用意したレジュメの後ろ1/3については、ほとんど触れられないまま、セミナーの予定時間を終了してしまうというありさまであった。V弁護士は、セミナーの途中からは完全に頭が真っ白になってしまい、半分支離滅裂の状態で話を終えることになった。実際には、セミナー前半ではそれなりに丁寧な解説をしていたこともあって、受講者の反応はそこまでひどいものではなかったが、V弁護士は、「大失敗をしてしまった。やっぱりこの話は受けるんじゃなかった。」と思い込んでしまい、強いショックを受けて、ひどく落ち込んだ。
  そのセミナー以降、V弁護士は、大失敗をしたショックから、単なるあがり症だけではなく、ひどい不安障害に悩まされるようになった。たとえば、打ち合わせの席などで依頼者と向き合うと、それだけで、セミナーのときの受講者から突き刺さる視線を思い出してしまい、極度の不安や動悸をおぼえるようになった。V弁護士の症状には波があり、症状が軽いときは打ち合わせ等も何とかこなせるが、症状がひどいときは声も全身もぶるぶる震え、パニックの発作の一歩手前にまで追い詰められることもあった。当然、依頼者は怪訝な顔をするし、それがますますプレッシャーになるという悪循環になった。また、電話による連絡等に対しても、恐怖にも似た強い不安を感じるため、V弁護士は、日常的な業務遂行にも支障をきたすようになった。
  V弁護士は、何とか、治そうと思い、カウンセルや医者通いを始めたが、気持ちが空回りして、なかなか、先が見えない状態が続いている。 (完)
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  V弁護士は、弁護士数9名の中規模事務所に勤務する登録4年目の若手弁護士であった。性格はまじめで大人しく、弁護士としての知識・経験等に特に優れたところはないものの、まずは同年代の弁護士の平均的な水準には達していた。ただ、V弁護士には、性格的に気の小さなところがあり、人前で話すときなどには極端にあがってしまい、何も喋れなくなってしまうようなところがあった。
  あるとき、V弁護士に、継続的取引に関する契約書の作成をテーマにした受講者100名程度のセミナーの講師をしてほしいという依頼があった。V弁護士は、自分が極端なあがり症で、人前で話をすることが苦手であるということを強く自覚しており、また、それまでにそのような大人数の前で話をした経験がなかったことから、気持ちの上で非常な尻込みをした。しかし、事務所のボスから、「弁護士たる者が人前でまともに話せないとは何ごとか。良い機会だから、君のそのあがり症も徐々に克服していったらどうだ。」と激励され、また、自分でもいずれ何とかしてあがり症を克服したいと常々考えていたことから、思い切ってその話を受けることにした。(続)
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 大学入試であれば、合格後にすべてを忘れても、大学で改めて勉強をすれば足りるかもしれない。司法試験も同じ発想で受けて、受かってしまう人がいる。ヤマかけをして、出そうもないところは一切勉強しないという人がいる。これは大きな間違いである。あまり司法試験に出ないところで、実務では必要な場所が多々あるのである。しかも、合格するとモチベーションが下がるし、色々と時間がとられるので、合格後にその部分を改めて勉強することが出来ない。結局は、事件の依頼がある毎に調べ物をすることになる。心当たりのある人は、少なくとも、司法試験に出る範囲の条文くらいは読んで内容を理解しておきたい。
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