下手に絞りをかけると違う答となってしまうので、翌日、ボス弁に「どんな事件ですか。」と聞いてみた。すると、「実は、今度講演を頼まれていて、その下準備として、大体の傾向を知りたいのだけど。」という答であった。「少し古い資料としては、こんな本があるのだけど、その後の傾向が知りたくてね。」と言って、20年前の小冊子のようなものを渡された。とりあえず、検索の範囲は過去20年には絞られたが、その小冊子は、事細かく色々な事例毎に金額が書かれていた。そこで、その小冊子の事例毎の文言で絞りをかけて、検索をしてみた。膨大な数の判例は、いくつかの山には分類されたが、一つ一つ読まなければならないことには変わりがなく、どうやってまとめれば良いかが、分からなかった。また、ある判例は、いくつかの山で重なっていることもわかり、それをどちらかの山に分けて良いかも分からなかった。これは、離婚原因が二つあるような判例は当然両方の山に入るのであって、どちらかに分けること自体が難しいのであった。
 Z弁護士は、今度は、小冊子がどうしてそのような分類をしたかを考え出した。ただ、離婚自体の理解が深くないZ弁護士にとっては、容易に答えは出なかった。元々、Z弁護士の勉強は、データベース型とも言うべき方法で、資料を集めて、暗記して、当てはまるものをそのまま答えることをしていたため、考える力は弱かった。司法試験の勉強に関して言えば、情報収集だけで、乗り切ることはできたのだが、ここで行き詰まってしまった。どうすれば、全部を読まなくて済むのかと考えても、絞りがかけられないため、作業は遅々として進まなかった。(続)