S弁護士は、登録3年目で、ボスと2人の事務所のイソ弁としてがんばっていた。
 S弁護士は、事務所の事件として、B氏の不動産関係の訴訟を行うことになった。B氏は、ボスの顧問先の紹介で、昔に、一回依頼を受けたことがあった。
 S弁護士は、ある程度の事件なら任されるようになっており、この事件もボスは、最初の方の打ち合わせに参加しただけで、その後は、ほとんどS弁護士のみで打ち合わせを行い、訴訟の期日もS弁護士のみが行った。
 訴訟自体は、簡単な事件とは言わないものの、比較的有利に進み、最終的には、1年半ほどで、B氏がある程度の損害賠償金を支払うものの、B氏に有利な形で和解となった。
 S弁護士は、B氏に非常に感謝され、大変良い気分になっていた。ところが、B氏が事務所に来るとの連絡があり、当初はS弁護士もその場に参加するつもりだったが、直前になって、S弁護士に外してくれるように、ボスから話があった。ボスに、「よくわからないんだけど、B氏が、2人だけで話したいということなんだよね。」と言われた。
 S弁護士も最初少し変に思ったものの、何かボスと折りいった話があるのであろうと、その時はあまり気にしなかった。
 S弁護士は、打ち合わせに参加するつもりだったので、特に他に用事もなく、自分の席で他の仕事をして、休憩しに事務所の外に出ようとした時に、ちょうど打ち合わせが終わったらしいB氏が帰るところに出くわした。(続)