Q弁護士は、ボス1人、姉弁1人の事務所に入所した。Q弁護士は、事務所に入って、いきなり問題に直面したが、それは事務員が、Q弁護士を馬鹿にすることだった。
 まず、事務長であるが、ボスの大学の数年後輩らしく、昔は司法試験受験生で、バイトで事務員になったらしいのであるが、そのまま事務所に正式な事務員としてずっと残って今年で30年近くという人であった。
 長年の経験から、裁判所関係の手続に関しては書記官なみに精通していて、ボスの信頼も厚かった。簡単な書面は、ボスではなく、その事務長がチェックし、ご丁寧に赤で訂正をして、Q弁護士に戻してきた。裁判書類に関しても、物件目録のチェック、戸籍謄本の確認など、司法修習中には、Q弁護士が殆ど勉強していないことに関し、大きな朱文字で直してきていた。その都度、「こんな書類を出したら、ボスが恥をかきますよ。」とニヤリと笑って、見下していた。しかも、Q弁護士のことをボスと一緒に、「Q君」と呼んでいた。
 Q弁護士としても、このことが嫌で嫌でたまらなかったが、自分の不勉強もあって、文句がつけられなかった。しかも、時々、事務長はボスにQ弁護士についての評価めいたことを告げているようであり、居心地が非常に悪かった。しかも、自分の不出来がボスにも伝わっていいると思うと、やりきれない気持ちであった。
当然、Q弁護士はその事務員に個人的な仕事は全く頼むことがなかった。
 もう1人は、Q弁護士より10歳ほど年上で15年目とのことであった。一言で言えば、とにかく仕事をしたがらないタイプであった。(続)