そこで、P弁護士はボスから指示があった際、メールでボスに確認をして、証拠を残すこととした。また、ボスに担当案件の報告をする際も、口頭の報告では、後日、「そんなこと聞いていない!」と怒鳴られることが再三あり、簡易な報告もすべてメールで行うこととした。ところが、ある日、既に報告したことを前提に、ボスに事件処理の方向性の確認をしたところ、ボスは、「報告自体聞いてない、勝手にそんなことをするな!」と激高して怒鳴り始めた。P弁護士は、「メールで報告しています。何月何日のメールです。」と回答すると、ボスはメールを確認し始めた。P弁護士は、ボスのパソコンを覗き込み、ボスが当該メールを開封していることも分かった。すると、ボスは自分の非を認めたくないばかりに、「こんな報告では意味が通じない。」などと、一層不合理な憤激を始めた。P弁護士は、頑迷固陋な性格のボスのもとで業務をすることに疲れ果ててしまった。
 また、他の訴訟案件の打ち合わせにおいて、ボスが依頼者から既に聴取していた重要な事実関係を理解していないため、的外れなことを述べ始めた。P弁護士は、依頼者の前でボスに恥をかかせることはしたくないけれども、依頼者一同が困惑し不信な表情を浮かべ始めたので、事務所の信頼を守るために訂正をした。すると、ボスは依頼者の前で恥をかかされたと感じ、その打ち合わせ中、依頼者に自分の権威を見せんとすべく、P弁護士を些細なことで怒鳴り続けた。P弁護士は、その日から、貝になった。(完)