新人弁護士O弁護士は、ある事務所に入所した。O弁護士のボスは、かねてより訴訟以外の業務を行うことが多く、要件事実や間接事実についての知識及び感覚に欠けているところがあった。O弁護士がある事件の訴状を起案するにあたり、必要な事実関係を依頼者に尋ねる必要があったので、打ち合わせにおいて、依頼者に事情を尋ねたところ、「ボスはそんなこと聞く必要はない!」とO弁護士の質問を遮断した。訴状に請求原因として損害と間の因果関係を記述するために必要な事実関係だったので、打ち合わせの後にO弁護士はボスにその旨説明をしたところ、ボスは「因果関係なんか、いらないんだよ!」と激怒した。O弁護士は、研修所で十分な勉強をしてきた自負があったので、請求原因の欠けた訴状を書くことに大変抵抗があったが、仕方なく、ボスの指示に従った。第一回口頭弁論期日において、裁判官から因果関係の主張が欠けているので、次回までに追加するよう注意され、その旨をボスに報告すると、「それは裁判官が間違っているから、次回期日で、裁判官間違っていますよ、と主張してきなさい。」と怒られた。O弁護士はやむを得ず、ボスの主張を次回期日で述べたところ、今度は、裁判官に、怒鳴られて、「次回期日までに主張しないのであれば、主張自体失当で終結します。」と言われてしまった。O弁護士は、その旨、ボスに報告すると、「よし、私が行って、裁判所を説得しよう。」と言って、次回期日に、裁判官と、口角泡を飛ばす大激論をする始末であった。結局、「そこまで言うなら、書いてやる。」と裁判官に捨て台詞を吐いて、因果関係の主張をすることとなった。O弁護士は、このようなボスの下で働くことに不安を感じ出した。(続)