壊れてしまった弁護士たち

若手弁護士に実際に起きた出来事を、個人を特定できないように相応のフィクションを交えながら紹介していきます。

カテゴリ: 辛口アドバイス

 メンタルの問題から、病院通いとなってしまった場合には、そこからは医者の領域であって、アドバイスは有効ではない。耳に痛い小言に加えて、辛口のアドバイスをいくつか集めてみた。温室育ちでは、この業界を乗りきることはできないことは、壊れた弁護士に現れている。
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 弁護士業務は、基本的に対立構造であり、最低限一人は敵対する関係の人がいることになる。一対一であれば、良いかもしれないが、事件によっては、マスコミ、世論がすべて敵に回ることもあり得る。この場合、味方といえるのは依頼者だけということになる。正に、四面楚歌状態である。弁護士を志す人は、まず、このような状況にも耐えられる覚悟が必要である。できれば、そのような仕事は避けたいと思う人がいるかもしれないが、浮世の義理や何かの拍子にそのような状況に陥ることがあることを日頃覚悟しておくべきである。この場合、依頼者の権利を守るのはあなたしかいないわけであるから、ある意味では、弁護士冥利に尽きるのである。
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 弁護士は頭脳労働者と思われているが、実は、最近、人気がないといわれる3Kかもしれない。「きつい、汚い、危険」の三拍子がそろっているのである。元々、人間のトラブルを扱う仕事であるから、当然かもしれない。楽で綺麗で安全と思っていたら、大間違いである。命をかけて仕事をしているとはいわないが、必要に迫られて徹夜続きとなったり、現場確認で泥まみれになったり、ちょっとした油断が危険を呼ぶこともあるのである。デスクワークだけで、法廷で格好良く弁論をする職業という認識は、大いなる誤解である。勿論例外もあるが、成り立ての頃は特に3Kの度合いが激しい。
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 24の人格は必要ないかもしれないが、弁護士は、同時にいくつかの立場を持つ必要がある。まずは、依頼者の立場であるが、当然、相手方の立場でも物を考える必要がある。さらに、裁判所の立場というよりは裁判官の考えも理解する必要がある。依頼者のことだけを考えれば良いというわけではない。別の視点から検討することにより、依頼者の言い分の弱点が見えたりもするのである。また、同種の事件で、原告だったり、被告だったりもする。攻守所を変えるのであるから、当然違う立場となる。その都度、自分の中で切り替えることになるが、うまく出来ないと、本当の多重人格者になってしまうかもしれない。
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 大学入試であれば、合格後にすべてを忘れても、大学で改めて勉強をすれば足りるかもしれない。司法試験も同じ発想で受けて、受かってしまう人がいる。ヤマかけをして、出そうもないところは一切勉強しないという人がいる。これは大きな間違いである。あまり司法試験に出ないところで、実務では必要な場所が多々あるのである。しかも、合格するとモチベーションが下がるし、色々と時間がとられるので、合格後にその部分を改めて勉強することが出来ない。結局は、事件の依頼がある毎に調べ物をすることになる。心当たりのある人は、少なくとも、司法試験に出る範囲の条文くらいは読んで内容を理解しておきたい。
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 「ジョーカーゲーム(柳広司著)角川書店」という本があり、弁護士ではなくスパイの話であるが、その基本理念は、何事にもこだわるな、ということにある。弁護士も、何かにこだわると、物が見えなくなったり、やる気がそがれたりすることがある。自分の信条に反する事件などは受けないという選択肢もあるが、成り立ての弁護士では諸般の事情からそれもままならないであろう。そのとき、嫌だ嫌だと思って、仕事をすると、かなりの確率で失敗したり、或いは、依頼者とトラブルとなったりするのである。ここは、自分の価値観を捨ててでも、真剣に事件に取り組むべきである。事件によっては、自分の人生をすべて否定することもあり得るのであるが、それを乗り越えなければならない。
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 同期の勤務弁護士が集まると、ボス弁の悪口や兄弁の悪口が話題となるが、結論として、自分たちは悪くない、彼らが悪いというところに帰着する。これによって、ストレスを発散させ、翌日からの仕事の英気を養うということであれば、少しは意味がある。しかし、自分たちの結論が正しく、本当にボス弁や兄弁が悪いと考えていたら、それは問題である。8割から9割までは、勤務弁護士の方が悪いのが実情で、本当にボス弁や兄弁が悪いのは少ない。自らの不手際を人の所為にして、自らを正当化する行為は慎むべきである。自分が正しいと思って行動することにより、さらに、人間関係も悪化し、良い結果にはならないのである。傷を舐め合うのはほどほどにした方が良い。
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 ありがちなパターンとして、毎日毎日夜遅くまで、仕事をしても、日々仕事が溜まっていくことがある。自分は仕事が遅いと豪語する強者もいるが、決して褒められたことではない。一度、何故仕事が溜まってしまうのか、冷静になって、考えるべきである。与えられた仕事の法律問題が分からず、その調査に時間がかかるのか、或いは、依頼者から事情を聞き出す時間がかかるのか、文章を書くのに時間がかかるのか、それとも、それらの複合形態か、など、原因は様々である。そして、いまひとつは、今できる仕事をまずこなすということもある。たとえば、図書館が閉館している時間に法律問題の調査はできない。とすれば、必然的に、今できる他のことを行うべきである。
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 交渉事が行き詰まったり、或いは、訴状を書いていてどうしても法律構成がうまくいかなかったり、デッドロックに陥ることは良くある話である。自分で色々考えること自体は、能力を高める効果もあるが、どうしても、うまくいかないと、事件を放置してしまうことがある。これは問題である。何故うまくいかないかを冷静に判断し、その理由が解明した場合に、次に検討すべきことは、その問題は解決できるのかを判断することになる。たとえば、もし、法的にできない裁判を依頼者にできると言ってしまったのであれば、謝るしかない。下手に、長引かせることはトラブルの元である。交渉事では、その理由が相手方にあるとすれば、それはどうしようもないのである。
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 すべての依頼者が、いい人とは限らない。相性が合わない、とか、性格が気に入らないなど、主観的に嫌な依頼者はいる。また、頼まれた仕事が進んでいないと、何となく会いたくない依頼者もいる。嫌だと思うと、お互い疎遠になり、意思疎通が欠け、ひいては、トラブルになりやすい。もし、嫌だと思ったら、逆に、積極的に打ち合わせを入れたり、報告書を提出したりなど、積極的に会う機会を設けるべきである。いつまで経っても、嫌だという感じは変わらないかもしれないが、仕事上のトラブルは避けられる。しかも、駄目なものは駄目だと意見ができるようになる。嫌な依頼者から逃げてはいけない。
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 成り立ての弁護士が千丈の堤ほど大きいとは思えないが、蟻の一穴で、すべてが壊れることもある。油断大敵である。少し、仕事に慣れたときに限って、大きな失敗をしがちである。なお、失敗は成功の元であるが、失敗を気にするあまり、羮に懲りて膾を吹く、ということになってはいけない。
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