壊れてしまった弁護士たち

若手弁護士に実際に起きた出来事を、個人を特定できないように相応のフィクションを交えながら紹介していきます。

カテゴリ: #19 意思疎通

 R弁護士は、イソ弁として、3年目の時に、個人事件として、離婚事件を受任した。
 R弁護士は、奥さん側で、とりあえず調停をして欲しいということで、夫である相手方のD氏に調停を起こした。離婚理由は、D氏がすぐ感情的になるということだけあったが、かなりひどい状態らしかった。
 D氏は、調停の席上、かなり感情的に話をするだけではなく、調停の期日が終わると、D氏は事務所に電話をかけて来て、その調停の話の内容について文句をつけてきた。
 ある時、またD氏から、電話があり対応していると、何か気に障ったのか、いつにも増してD氏は感情的になり、「所長を出せ所長を。」と言い始めた、
 R弁護士は、「これは、私が個人として受任している事件なので、所長は関係ない。」と説明をしたが、相手は、「そんな馬鹿な話があるか。大病院とかで、担当の医者に問題があれば、院長とかが責任を持つのは当然だ。屁理屈を言うな。」と更に怒り始めた。D氏は、自分が医者であることから、その感覚で話をしているようだった。
 R弁護士は、ボスに代わるわけにもいかず、ひたすらそれはできない旨を説明したところ、D氏は「話にならん。」と言って、電話をガチャンと切った。
 その時は、それで終わったと思っていたが、数日後、R弁護士は、ボスに呼ばれた。
 ボスによると、R弁護士が留守の時に、D氏から電話があり、R弁護士がいないと聞くと所長に繋いでくれと言われ、事情をよく知らない事務員さんがボスに繫いでしまったということであった。(続)
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 ボスが、不機嫌そうに「いやぁ、いきなり私に対しても、えらい剣幕で、この事務所では、何であんな弁護士を雇っているんだ、所長として責任を感じないのかとか、一方的に言って切られてしまってね。うちは、個人事件は一応自由ということになっているが、こういうことは極力ないようにして欲しい。」と言うので、R弁護士が謝ると、ボスは続けて「まぁ、私も弁護士だから、いろんな相手方がいることは分かっているので、この件はもういい。ただ、良い機会だから言っておくが、君は債務整理でヤミ金事件もやっているようだが、最近、事務員がヤミ金業者からの電話を怖がっているようだ。これも個人事件だから自由だと言ってしまえばそれまでだが、あまり度が過ぎると、うちのカラーに合わないという話にもなって来るから、その点、よく考えるように。」と言われてしまった。
 元々、ボスからは、個人事件は自由にして良いよ、と言われていたのに、ボスは、あまり、そのことを快く思っていなかったことが分かった。R弁護士は、その場はひたすら謝って退散したが、何となく、釈然としなかった。
 このことがきっかけとなって、ボスとの人間関係がだんだん悪くなっていった。R弁護士は、できるだけ、事務所に迷惑をかけないように、事件処理をしていたが、何故か、悪い方向悪い方向で、物事が動き始めてしまった。ある日、ボスが、R弁護士の事件の電話の取り次ぎをする事態も発生し、ボスから、「私は、君の事務員かな。」とまで、イヤミを言われてしまった。これ以上、悪化してはいけないと思い、R弁護士は事務所を去った。 (完)
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