壊れてしまった弁護士たち

若手弁護士に実際に起きた出来事を、個人を特定できないように相応のフィクションを交えながら紹介していきます。

カテゴリ: #22 お山の大将

 新人弁護士O弁護士は、ある事務所に入所した。O弁護士のボスは、かねてより訴訟以外の業務を行うことが多く、要件事実や間接事実についての知識及び感覚に欠けているところがあった。O弁護士がある事件の訴状を起案するにあたり、必要な事実関係を依頼者に尋ねる必要があったので、打ち合わせにおいて、依頼者に事情を尋ねたところ、「ボスはそんなこと聞く必要はない!」とO弁護士の質問を遮断した。訴状に請求原因として損害と間の因果関係を記述するために必要な事実関係だったので、打ち合わせの後にO弁護士はボスにその旨説明をしたところ、ボスは「因果関係なんか、いらないんだよ!」と激怒した。O弁護士は、研修所で十分な勉強をしてきた自負があったので、請求原因の欠けた訴状を書くことに大変抵抗があったが、仕方なく、ボスの指示に従った。第一回口頭弁論期日において、裁判官から因果関係の主張が欠けているので、次回までに追加するよう注意され、その旨をボスに報告すると、「それは裁判官が間違っているから、次回期日で、裁判官間違っていますよ、と主張してきなさい。」と怒られた。O弁護士はやむを得ず、ボスの主張を次回期日で述べたところ、今度は、裁判官に、怒鳴られて、「次回期日までに主張しないのであれば、主張自体失当で終結します。」と言われてしまった。O弁護士は、その旨、ボスに報告すると、「よし、私が行って、裁判所を説得しよう。」と言って、次回期日に、裁判官と、口角泡を飛ばす大激論をする始末であった。結局、「そこまで言うなら、書いてやる。」と裁判官に捨て台詞を吐いて、因果関係の主張をすることとなった。O弁護士は、このようなボスの下で働くことに不安を感じ出した。(続)
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 また、他の事件において、証拠調べ段階にまで及んでいるにもかかわらず、ボスの指示に基づきやむなく書いていた準備書面がどうしても府に落ちないので、O弁護士はボスが争点を理解していないのではないかと疑問に思い、ボスに「争点は○○ですよね。」と確認をした。参考判例も示して、説明をした。するとボスは、「そんな法理論はない!O弁護士の独自の説だ!」とまたもや激情しO弁護士を非難し始めた。ボスが主張を変えないまま、証拠調べが終わった。裁判所からの和解勧告に対し、相手方は、ボスがトンチンカンな主張立証をしたので、応ずる気配がなかった。ボスも自説にこだわったために、裁判所の提案に乗る気配がなかった。それでも、裁判所が、半ば強引に和解勧告をしたために、双方、和解の席に着くこととなった。和解の席上、裁判官がボスに対し、「問題となっているのはこの点ではないですか。」と教示したが、執拗に自説を述べて、結局、和解には至らなかった。判決が出て、O弁護士が、従前指摘した判例に沿った内容であった。そのことに対しても、ボスは、「おかしい。おかしい。」を連発し、依頼者を無理矢理説得して控訴させようとした。その際に、O弁護士が、判例のことを説明しようとすると、ボスは「おまえは黙っていろ、何も分からないくせに。」と依頼者の前で罵倒した。O弁護士は、静かに退席し、二度と事務所には戻らなかった。(完)
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