壊れてしまった弁護士たち

若手弁護士に実際に起きた出来事を、個人を特定できないように相応のフィクションを交えながら紹介していきます。

カテゴリ: #21 朝令暮改

 新人弁護士P弁護士は、某事務所に内定を得、一人前の弁護士になるべく志を高く持ち、溌剌として入所初日を迎えた。
 事務所に行くと、早速、ボスから指示がきた。指示は「このような内容の契約を締結したいから、契約書を作成する際のポイントを書いておいて。」というものだった。P弁護士は、「契約書を一から作成するのではなく、まず、ポイントとなる部分を挙げれば良いのですか。」と確認した。そうするとボスは「そうだ。ポイントとなる項目を挙げて。」と返答した。そこで、P弁護士は、張り切って図書館などで調査をし、翌日、ボスに書面を提出した。ところが、ボスは、書面を見るやいなや「契約書を作れと言っただろう。」と前日とは明らかに異なることを声を荒げて述べ、P弁護士を叱責し始めた。P弁護士はボスの言辞に大変驚き、困惑しながらも、ボスの指示に従い、急いで、契約書の作成に着手した。
 日数が経過し、ボスと同僚とのやりとりを伺っていると、ボスの指示は朝令暮改が頻繁であること及びボスは自分が出した当初の指示を覚えていないことが分かった。(続)
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 そこで、P弁護士はボスから指示があった際、メールでボスに確認をして、証拠を残すこととした。また、ボスに担当案件の報告をする際も、口頭の報告では、後日、「そんなこと聞いていない!」と怒鳴られることが再三あり、簡易な報告もすべてメールで行うこととした。ところが、ある日、既に報告したことを前提に、ボスに事件処理の方向性の確認をしたところ、ボスは、「報告自体聞いてない、勝手にそんなことをするな!」と激高して怒鳴り始めた。P弁護士は、「メールで報告しています。何月何日のメールです。」と回答すると、ボスはメールを確認し始めた。P弁護士は、ボスのパソコンを覗き込み、ボスが当該メールを開封していることも分かった。すると、ボスは自分の非を認めたくないばかりに、「こんな報告では意味が通じない。」などと、一層不合理な憤激を始めた。P弁護士は、頑迷固陋な性格のボスのもとで業務をすることに疲れ果ててしまった。
 また、他の訴訟案件の打ち合わせにおいて、ボスが依頼者から既に聴取していた重要な事実関係を理解していないため、的外れなことを述べ始めた。P弁護士は、依頼者の前でボスに恥をかかせることはしたくないけれども、依頼者一同が困惑し不信な表情を浮かべ始めたので、事務所の信頼を守るために訂正をした。すると、ボスは依頼者の前で恥をかかされたと感じ、その打ち合わせ中、依頼者に自分の権威を見せんとすべく、P弁護士を些細なことで怒鳴り続けた。P弁護士は、その日から、貝になった。(完)
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